12人の怒れる男たち

  

 
 

スラムに住む少年が『父親をナイフで刺し殺した』として第1級殺人罪で死刑に問われた。
ドラマは無作為に選ばれた12人の陪審員たちが6日間の審理を傍聴し
評決を出すために陪審員室に入室するところから始まる。


◎階下に住む老人は「殺してやる!」という叫び声を聞いた直後、階段を駆け下りて行く少年を見ている。

◎高架鉄道の向側に住む婦人は少年が父親の胸にナイフを突き立てる瞬間を目撃したと証言する。

◎検死官の出した死亡推定時刻に少年は映画館にいたと証言するが、彼の姿を見た者は誰もいない。


有罪となれば死刑が確定する評決も『5分』で済むと思われた。
《父親殺し》が既定の事実のような密室で一人の男が唐突に切り出す。

『不遇な境遇で育った彼のために、せめて一時間話しあえないか?』
『人の命を五分で決めてもし間違っていたら?』と。


評決は全員一致でなければならない。
11人の冷ややか視線が突き刺さる。


この夏一番の暑さになるだろうと予報された日の午後、

扇風機もガタついている殺風景な裁判所の一室で、男たちの会話がギクシャクしながら始まる。

--完璧な《事実》が意外な側面を見せ始める--
2000年 東京都優秀児童演劇  優秀賞受賞